医療最前線

ヤンセンファーマ、日常生活に多大な支障をきたす乾癬の負のサイクルを紹介、生物学的製剤という治療選択や新たな薬剤の登場について解説

2018.05.28 20:48 更新

 ヤンセンファーマは、乾癬患者の実態や最新の治療に関するセミナーを5月24日に開催した。セミナーでは、名古屋市立大学大学院医学研究科 加齢・環境皮膚科学 教授の森田明理先生が生物学的製剤を用いた乾癬治療などについて講演を行った他、乾癬患者で一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会の添川雅之氏が登壇し、乾癬患者が抱える負のサイクルについて理解を求めた。

 「当社は、日本でビジネスを始めてから今年40周年を迎える。その節目の年に、乾癬治療の新たな選択肢として期待される生物学的製剤『トレムフィア』を上市した。乾癬は、その発症原因や根治が難しい点など、十分な治療を得ることができていない患者が多い疾患でもある」と、ヤンセンファーマ 免疫・感染症事業本部の関口修平本部長が挨拶。「乾癬を発症した場合、身体的な見た目による多大なストレスに加え、乾癬(かんせん)という病名から感染症であると勘違いされるなど、負のサイクルに陥ってしまう患者も少なくない。それだけに、革新的な薬剤の提供のみならず、医薬品を超えた価値を患者に届けていくことが使命であると認識している」と、患者をあらゆる面でサポートしていくことが大切なのだと力説する。「当社では、乾癬についてもっと多くの人々に理解してもらうことを目的にセミナーを開催することで、患者の負のサイクルの軽減に少しでも貢献できればと考えている」と、今回開催したセミナーを通じて、乾癬という疾患の現状や患者の実態などをしっかりと伝えていきたいと意気込んだ。

 次に、森田先生が登壇し、乾癬とその治療について詳しく解説した。「乾癬は皮膚の病気で、日本には約50から60万人もの患者が存在するといわれている。患者の男女比は、2:1とされ男性に多くみられる傾向にあるが、男性の発症年齢は50代であるのに対し、女性は20代と50代に多く見られ、女性では思春期の患者も多いことがうかがえる」と、患者数やその概要について紹介。「乾癬の重症度は、罹患した身体部分とその割合に基づいている。私たちの手の平の面積が皮膚全体の1%であるため、これを目安に3~10%の場合は中等度、10%以上が重度と診断される」と、乾癬が発症した面積が病気の度合いの目安になっているとのこと。「重度になると、顔や頭部などに発症するため、周りの目が気になり、気分も億劫になってくる」と、顔にまで乾癬が現れると、精神的苦痛が一気に高まるのだと教えてくれた。

 「乾癬は主に5つに分類され、尋常性乾癬が約90%と大部分を占める。次に10%程度存在しているのが、乾癬性関節炎。約1%程度の乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬の他、滴状乾癬も存在する」と、様々な亜型が存在するのだと指摘する。「乾癬に罹患すると、皮膚が赤くなる“紅斑”、皮膚が盛り上がる“浸潤・肥厚”、銀白色のかさぶたのような“鱗屑”、フケにようにボロボロと剥がれ落ちる“落屑”がみられる。また、かゆみをともなう場合もある」と、主な症状について説明してくれた。「乾癬による表皮の異常な増殖の一因として考えられているのが『IL-23/Th17軸』。これが病態の中核であるとみられている」と、最近の病態の見解について紹介。「乾癬は全身性炎症という病態であるため、その他併存疾患に相互影響をもたらす」と、インスリン抵抗性やアテローム性動脈硬化症などを誘導する一方で、さらに乾癬を誘発・悪化させる“乾癬マーチ”という概念が提唱されていることから、治療が必要な疾患であると説いていた。

 では、乾癬をどのように治療するのだろうか。「まず、局所療法として、塗り薬による外用治療を行う。その後、光線療法や内服療法、注射療法を行う」と、段階的に治療を行っていくとのこと。「乾癬患者200名にアンケートを行った結果、平均的な罹病期間は18年で、症状認識から乾癬との診断を受けるまでに、平均3年半程度かかっていたこともわかった」と、症状認識から受診までが長く、その後乾癬と診断されるまで1年も経過していることが明らかとなった。「患者は、頭皮や足などの皮疹を経験したことがあり、周りからみられる部位を気にしていることもわかった。また、治療については満足していない患者が多く、最新の治療や現在受けることができるすべての治療方法、今後の治療方法、発症原因や仕組みについて知りたがっている」と、どんな治療法があるのかわかっていない点も、治療に満足していない要因になっているものとみられる。これを裏付けるように、「注射療法である生物学的製剤の存在を知らない患者は55%と半分を超えた」と、治療について患者があまり理解していない点が浮き彫りとなった。

 「乾癬では、7つの生物学的製剤を選択できるようになった」とのこと。「まず、ビタミンD3、ステロイド配合薬で4~8週間、外用療法の効果を判定する。効果が不十分であれば、光線療法の併用や全身療法を行う。光線療法であれば5回程度で有効性を判断する。内服薬のシクロスポリンは3~6ヵ月で有効性を判断している。これらが効果不十分なら、治療方法の1つとして生物学的製剤を検討していく」と、効果不十分の目安について言及してくれた。「そして今回、生物学的製剤の新たな選択肢として、トレムフィアが承認された。同剤は、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬に対して適応症をもつ薬剤で、IL-23という物質の働きを抑える薬となっている」と、新しい薬剤について解説。「IL-23は、リンパ球に働くことにより、乾癬の皮膚や関節の症状を引き起こすIL-17を多く放出。乾癬患者は、IL-23が過剰に増えているが、トレムフィアを投与することでIL-23の働きを抑え、IL-17の放出を減らすことができる」と、作用機序について教えてくれた。「トレムフィアを投与開始し、16週後に73.3%の人が10%以下に乾癬を抑えることができた。また、これが48週まで持続することも明らかとなっている」と、多くの患者から効果が得られている薬剤なのだと説明していた。

 そして、森田先生と添川氏によるトークセッションが行われた。乾癬患者の添川氏は、「14歳の時に、乾癬と診断され、28歳の時には重症化。全身の皮膚に症状がみられ、高熱にうなされたり、倦怠感が続くなど、7年間入退院を繰り返した」と、汎発性膿疱性乾癬に罹患したのだという。「全身に毒々しい症状がみられる他、乾癬(かんせん)という病名であるため、感染症と連想されてしまう」と、乾癬は見た目がひどくなっていくのと、病名が紛らわしく誤解されやすいのだと訴える。「自分の体が周りにどのようにみられているのか、常に不安でネガティブになっていってしまう」と、周りの目を気にしてしまう病気なのだと話していた。「また、うつらない病気であるということを説明しなければならない」と、乾癬の認知度が低い点も、患者の負担になる大きな要因なのだと語っていた。また、数年ぶりに再発した際には、生物学的製剤で治療したという添川氏。「名称から、怖い薬とのイメージを持つ患者も少なくないが、効果が得られる薬剤であると認識している」と、再発後、生物学的製剤で治療したことで、乾癬の症状をほぼ抑えることができたと強調していた。

 最後に森田先生は、「乾癬患者は、前向きで明るい人が多いものの、20代で発症した女性などは非常につらい思いをしている。一方、働き盛りで発症した男性も、会社を休んでまでして病院に通うことを億劫だと感じているようだ。しかし、症状がみられる場合は皮膚科を受診し、治療法を理解した上で、前向きに取り組んでほしいと思っている」と、乾癬を治すためには、治療法の理解が不可欠なのだと話していた。添川氏は、「現在、様々な治療法が確立されてきたことで、乾癬の病状をコントロールすることができるようになってきた。それだけに、将来を悲観することなく、治療に前向きに取り組んでほしい。また、全国に20の患者会が存在するので、積極的に活用してほしい」と、乾癬患者は一人で悩まず、周りの患者の意見にも耳を傾けながら、治療を行ってほしいと話していた。

ヤンセンファーマ=http://www.janssen.com/japan/

 


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