医療最前線

日本分析機器工業会と日本臨床検査薬協会、スポーツ全般の世界のアンチ・ドーピング事情やドーピング検査の概要についてセミナーを開催

2018.03.16 17:30 更新

 日本分析機器工業会(JAIMA)と日本臨床検査薬協会(JACRI)は、事業推進活動の一つとして、「臨床検査」の重要性と価値、貢献について、疾病や臨床検査に関する知識や情報提供する目的でセミナーを開催している。3月8日に行われたセミナーでは、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の浅川伸専務理事・事務局長を招き、スポーツ全般の世界のアンチ・ドーピング事情やドーピング検査の概要などについて紹介してもらった。

 「臨床検査では、血液や尿などの検体検査がある。この検査に近いものとして、ドーピング検査が存在する。ドーピング検査は、どんな環境で行われているのか、この検査がスポーツにどのような力を与えているのかという点について、JADAの浅川専務理事に説明してもらう」と、日本臨床検査薬協会の望月克彦専務理事が挨拶した。

 そして、「スポーツにおけるアンチ・ドーピング活動の役割を考える」と題して、JADAの浅川専務理事が講演を行った。「2016年に行われたリオデジャネイロ五輪では、A検体分析における陽性反応は28検体存在した。その中でTUEという事前申請付与の済みのものが14検体、うち違反確定は10検体だった。このうち手続き継続中も4検体存在する」と、陽性反応を示した検体数について紹介。「リオデジャネイロ五輪以外の活動としては、各国のアンチ・ドーピング機関と連携し、10のハイリスク競技種目と8位以上の成績が見込まれるアスリートをインテリジェンスに基づき1333人抽出している」と、疑わしき種目と選手をリスト化して、情報を各国で共有しているのだと教えてくれた。「インテリジェンスに基づき抽出した1333人を対象にリスク分析に基づくターゲット検査では、39.0%に対して、尿・血液・必要に応じた追加メニューを分析。22.6%に対して、尿、または血液。そして、15件の要請摘発を行った。また、33.0%に対して、アクセスできなかったものは、国際オリンピック委員会によってフォローアップしてもらい5件の要請摘発を行った」と、採血だけ、尿検査のみ実施など、両方の検査を行うなど大会によって検査方法を立案していると説明していた。

 「世界のドーピング防止プログラムとしては、WADAがこの活動の統括組織を成す。アンチ・ドーピング規則違反は、採取した尿や血液に禁止物質が存在すること。禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること。ドーピング検査を拒否または避けること。ドーピング・コントロールを妨害または妨害しようとすること。居場所情報関連の義務を果たさないこと。正当な理由なく禁止物質・禁止方法を持っていること。禁止物質・禁止方法を不正に取引し、入手しようとすること。アスリートに対して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てること。アンチ・ドーピング規則違反を手伝い、促し、共謀し、関与すること。アンチ・ドーピング規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つこと」と、規則違反を列挙。「世界のトレンドとしては、黒幕が存在し、この人物をしっかり特定して、摘発することに重きを置いている」と、選手一個人の判断で、ドーピング違反を行うケースはなく、これを促したりする人物や組織がバックに存在するのだと教えてくれた。

 「ドーピング防止プログラムでは、五輪開催の必須要件として、同一都市内および国内にWADA認定の分析機関がなければならない」と、ドーピング検査ができるラボ施設が存在しない都市または国では、五輪の開催はできないのだと説明する。「また、1個の検体からは見つからないケースもあるため、長期間のアプローチで検体の提供を求めている」と、五輪開催後、数年が経過した後に、ドーピング違反が確定するケースは、長期間の検体の提供によって摘発できているのだと話していた。「アンチ・ドーピング活動を行うことは、スポーツの価値を守る活動であり、スポーツの価値を向上させる活動でもある。つまり、スポーツの価値を成立せしめるものであり、スポーツの前提である公正な環境を担保するものがアンチ・ドーピングということになる」と、疑いがないという環境を作っていかなければならないのだと力説する。「アンチ・ドーピング活動は、公正・公平な環境で競技するというアスリートの基本的な権利を担保する活動であり、スポーツのフェアネス、固有の価値・チカラ、本来の姿を守り、向上させる活動でもある」とのこと。「そして、大会の成功の前提となる、社会的評価に対する予防措置やアスリートがスポーツの価値について考え、自らメッセージを発信するための気づきを与える活動であると自負している」と、スポーツが健全であり、その価値が正しく評価される環境が担保されていることが前提として、アンチ・ドーピング活動は存在するのだと教えてくれた。

 最後に日本分析機器工業会 医療機器委員会の鈴木一弘副委員長は、「アスリートから検体を取り、分析するための多大な苦労を知ることができた」と、浅川専務理事の講演に関する感想を語ってくれた。

日本分析機器工業会=https://www.jaima.or.jp
日本臨床検査薬協会=http://www.jacr.or.jp/


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