医療最前線

ノーベルファーマ、亜鉛不足による味覚異常や食欲不振からおこる負の連鎖について解説

2017.10.10 10:26 更新

 ノーベルファーマは10月4日、「食欲の秋に考える、味覚異常や食欲不振からおこる負の連鎖 -亜鉛不足からはじまるフレイルへの道-」と題したセミナーを開催した。同セミナーでは、臨床現場で更年期の患者を中心に数多く診断・治療しているマイシティクリニック(新宿)院長の平澤精一先生から、更年期以降の栄養不足の現状、とくに亜鉛不足が引き起こす不定愁訴、各種症状と亜鉛補充の有用性について解説してもらった。また、日本でも数少ない「味覚専門外来」を担当し、味覚障害研究の第一人者である、兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師の任智美先生が、「味覚異常」が引き起こす栄養状態の低下とフレイル連鎖の問題点について講演を行った。

 講演を前に、ノーベルファーマの高橋義宣営業本部長が挨拶した。「亜鉛が減少すると身体に様々な影響を及ぼすとされている。さらに更年期による亜鉛不足に悩む患者も多くみられる。こうした患者たちへの啓発を目的にセミナーを開催し、亜鉛不足で悩む人々の一助になれればと考えている」と、亜鉛不足で悩む更年期以降の人々に製品などを通じて啓蒙していくと話していた。

 「亜鉛とは、人体に必要な五大栄養素のひとつであるミネラルの1種。細胞代謝を促進するミネラルで、全身の各臓器や細胞に必要不可欠な栄養素。亜鉛は、体内の様々な酵素の働きを助けるミネラルであり、新陳代謝の活性化やタンパク合成の他、小児の発育を助ける」と、亜鉛の栄養について説明するマイシティクリニック(新宿)院長の平澤精一先生。「皮膚、毛髪、爪の健康維持や創傷の治癒を促進する」と、皮膚などにも作用するとのこと。「味覚の維持や唾液の分泌、性機能維持、正常な妊娠の維持、視力維持の作用も報告されている」と、味をつかさどる機能にも作用するのだと教えてくれた。「さらに、脳機能・精神状態の安定化やアルコール分解の促進、肝機能の保護。免疫機能を高めたり、活性酸素の除去やインスリンの生成・作用維持が確認されている」と教えてくれた。

 「亜鉛不足によって引き起こされる症状としては、知覚異常の他、成長障害、湿疹・皮膚炎・口内炎・脱毛・褥瘡(じょくそう)がある。また、貧血・食欲不振、骨粗しょう症、免疫力の低下、慢性肝疾患・肝硬変の悪化、糖代謝異常、情緒不安定・記憶力低下・うつ傾向、性機能障害・不妊症・性ホルモン減少と多岐にわたる」と、身体的な部分から精神的な部分へと広範囲に症状として現れてくるのだと指摘する。「亜鉛不足の原因は、食品からの摂取不足となる。しかし、最も含有量の多い牡蠣だけを毎日食べるわけにもいかない」と、食品からうまく摂取するのは困難であるという。「この他、吸収障害や妊娠・授乳によって亜鉛の需要が増す状況であったり、亜鉛排出の増加、過度の運動が亜鉛不足の原因といわれている」と、亜鉛が不足してしまう理由について言及してくれた。

 「亜鉛不足を予防するには、亜鉛を多く含む食品を摂取する他、過度の運動を避けるようにすることが望ましい」と、過度の運動を行った場合は、充分な亜鉛摂取を心掛けてほしいとのこと。「一方で、極端に亜鉛を摂取した場合、過剰症状が出ることがあるので注意が必要だ。慢性的亜鉛過剰症に陥ると、相対的な銅、鉄欠乏による貧血や免疫障害、性機能の低下、味覚・嗅覚低下、善玉コレステロール低下、抗酸化機能低下がみられる。さらに、薬剤との相互作用もある。亜鉛は非ステロイド性抗炎症剤NSAIDの効果を減弱させることがある」と、亜鉛の摂り過ぎにも注意してほしいと話していた。

 次に、兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師の任智美先生が、高齢者の味覚異常について説明してくれた。「当科の味覚外来を年代別に見てみると、50代、60代、70代の割合が高い」と、高齢者が味覚異常を訴える傾向が強いのだと指摘する。「味覚は、甘味、塩味、酸味、苦味の4つ。旨味は別となる。さらにイチゴ味やバナナ味は風味であり、嗅覚となる」と、味覚の基本的な部分について教えてくれた。「味覚障害の程度を確認するには、定量検査を用いる場合と、定性検査を用いる場合がある。障害の部位として、味覚受容器障害では、味を感じる味細胞の代謝が遅くなる。これは亜鉛欠乏が関与している。味覚神経障害は、構成される4種類の神経支配に一致した障害で、医原性が多い。味覚中枢障害では、脳血管障害、認知症疾患、頭部外傷となる。心因性では、味覚を感じる機能は十分あるが、味を感じていないように思ってしまう。身体表現性障害であるといえる」と、味覚障害の種類について説明してくれた。

 「一般的な受容器障害の機序としては、一定のサイクルで味細胞が入れ替わる。細胞が作られるときに亜鉛が欠乏すると細胞分裂に必要な酵素が働かないため、味細胞が生成されない。古くなった味細胞は味を感じ取れない」と、味覚障害の作用機序について解説してくれた。「高齢者の味覚障害の原因としては、薬剤性味覚障害が多くなっている」と、何かしらの薬を服用している高齢者は、薬剤から味覚障害を訴える場合が多いのだと指摘していた。「味覚障害の治療は、亜鉛内服療法が一般的となっているが、味覚障害として保険適応のある薬剤は、亜鉛製剤を含めて現時点では存在していない」と、エビデンスを持つ唯一の治療でありながら、保険適応の薬剤はないのだと訴える。「亜鉛補充療法以外では、漢方を多用している」と、亜鉛補充療法で効果が見られない場合は、漢方を併用すると話していた。「高齢者は、味覚障害を年齢のせいだと判断し、諦めてしまう傾向もある。特発性・亜鉛欠乏性の味覚障害では、70%を超える治癒となっている。それだけに、しっかりとした診断を受けてほしい」と、味覚に異常を感じたら、専門外来を受診してほしいと話していた。

ノーベルファーマ=http://www.nobelpharma.co.jp



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