医療最前線

文京学院大学、高齢者の水虫に関するプレスセミナーを開催、施設入所・在宅に関わらず高齢者の白癬菌保菌率は高い傾向、水虫予防はこまめな足ケアが重要に

2017.07.18 11:50 更新

 文京学院大学は、「高齢者の『水虫』を防ぐためには ~薬剤耐性に関する最新研究の現場から~」と題したプレスセミナーを7月6日に東京の本郷キャンパスで開催した。セミナーでは、水虫の原因となる「白癬菌(はくせんきん)」の研究や公衆衛生学を専門とする文京学院大学 保健医療技術学部 教授の藤谷克己先生が登壇し、藤谷先生が行った白癬菌に関する最新の調査研究について説明した他、高齢者に対する水虫の予防法を教えてくれた。

 「水虫の原因菌である白癬菌は、Trichophyton属と呼ばれるカビの一種の皮膚糸状菌で、これが足底や趾間部に感染症を引き起こす。白癬菌の感染経路としては、白癬菌保菌者から環境中に散布され、非感染者の足底や趾間に付着。皮膚の角質から内部へと侵入し、感染する。また、白癬菌は、環境中で長期生存が可能であることも特徴だ」と、水虫を引き起こす原因である白癬菌について解説する藤谷先生。「今回、白癬菌の感染状況について、10代から90代の男女159名の菌散布率と因子別の関連性を調査し、疫学的に解析を行った。この調査では、とくに施設に入所している高齢者と、デイサービスを利用している在宅の高齢者との保菌率の違いを調べた」と、施設入所の高齢者に水虫が多いとされている点について大規模な実態調査を行ったという。

 「調査では、対象者の足部の検体をCotton swab sampling法によって採取した。これは、生理食塩水に湿らせた綿棒を使って、足裏および趾間を拭き取り、検体を採取するという方法。また、靴下からも検体を採取するべく、マイコセル寒天培地に直接靴下をスタンプする方法を用いた。検体は、14日間培養後、マイコセル寒天培地に生じたコロニーを採取し、巨大培養法およびスライドカルチャー法によって白癬菌の同定を行った」と、調査の実施概要を説明。「この調査の結果、白癬菌の散布率は、一般成人群(65歳以下)が9%であるのに対し、高齢者群(65歳以上)では55%に達していた。また、10代を基準とした年齢別のオッズ比を見ても、年齢と共に散布率が増加する傾向にあり、とくに65歳以上のオッズ比は10代の20倍にも及んでいた」と、高齢者ほど白癬菌の保菌率が高いことが示唆された。

 「今回の研究の主題であった、在宅高齢者と施設入所高齢者との保菌率の比較については、どちらが有意に高いという結果は示されなかった。このことから、施設入所中に白癬菌に罹患したとは必ずしも言いきれない実状が浮き彫りになった。多くの高齢者は、在宅の生活環境で白癬菌をすでに保有しているのではないかと推察される」と、施設に入所した後に水虫を発症した高齢者も、在宅の時点で白癬菌に感染していた可能性があるとの考えを示した。「また、今回の研究の過程で、白癬菌にも薬剤低感受性が見られた。この結果は、日本では初めての報告となるが、薬剤耐性菌として存在するのか、菌種の特異的なものかはわかっていない」と、白癬菌にも薬剤耐性があることが明らかになり、現在その確認試験を実施中であると述べていた。

 この研究結果を踏まえて、藤谷先生は、「水虫は、命に関わる疾患ではないため、施設ではケアが見過ごされがちになる。しかし、症状が進行すると、爪がはがれたり、最悪の場合、歩行困難に陥るなど、高齢者のQOLに大きな影響を及ぼす。また、施設入所後に水虫が発症した場合には、家族からのクレームにもつながる。水虫は、足をこまめに水で洗うことで、簡単に予防することができる。入浴が難しい状況でも、足環境のケアはしっかり実践してほしい」と、高齢者の水虫を予防するには、足環境をこまめにケアすることが重要であると提言していた。

文京学院大学=http://www.u-bunkyo.ac.jp/



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