医療最前線

ヤンセンファーマ、クローン病治療薬「ステラーラ点滴静注130mg」を発売、クローン病患者に対する周囲の理解の重要性も説く

2017.05.30 20:29 更新

 ヤンセンファーマは5月29日、「クローン病に関するメディアセミナー」を行った。炎症性腸疾患は、主にクローン病と潰瘍性大腸炎を指す。いずれも国の指定難病であり、現在、日本には22万人以上の患者がいるとされている。若年層で発症することが多く、腹痛、下痢、血便などの症状がみられ、長期にわたって再燃と寛解を繰り返すという。このクローン病の一般での理解を深めることを目的に、クローン病治療の第一線で活躍している東邦大学医療センター 佐倉病院 消化器内科教授の鈴木康夫先生を迎え、疾患の基礎知識や最新の治療法について紹介してもらった他、クローン病患者を招き、患者の困りごとに焦点を当てたトークセッションなども行われた。

 「クローン病は炎症性腸疾患の一種で、日本では約4万人が発症しており、15歳から35歳の間で診断されることが多い疾患となっている。直腸からの出血、頻繁な下痢、腹痛および腹部圧痛、体重の減少および発熱などの慢性的な衰弱性の症状をともなう」と、ヤンセンファーマ IPI事業本部の関口修平事業本部長が挨拶。「現時点でクローン病を完治させる方法はなく、クローン病患者の4分の3が手術を必要とするため、治療薬の選択肢が広がることを望まれていた」と、クローン病の現状について解説。「今回、中等症から重症の活動期クローン病の導入療法の治療薬として『ステラーラ』を上市した。『ステラーラ』は生物学的製剤で、症状を速やかに改善させ、最長2年まで継続して症状をコントロールできる。当社では、『ステラーラ』を通じて、クローン病の治療に貢献していきたい」と、新たな選択肢が広がることで、クローン病患者のQOL改善につながることを期待していた。

 そして、東邦大学医療センター 佐倉病院 消化器内科教授の鈴木康夫先生が、IBDという疾患、最新の治療、QOLについて講演を行った。「IBDとは炎症性腸疾患のことで、腸に炎症を起こす病気。IBDは、特異性と非特異性に分類され、原因が定かでない非特異性には、クローン病や潰瘍性大腸炎が含まれる」と、IBDの分類について解説。「クローン病患者は年々増加傾向にあり、疫学研究から約7万人の患者が存在するといわれている」と、増加傾向にある疾患なのだと話していた。「クローン病は、原因不明のため、何度も再発を繰り返すのが特徴。また厄介なのが、一度罹患すると、腸管へのダメージが蓄積されていく」と、寛解と再発を繰り返していく中で、腸管はダメージを蓄積させていくのだと警告する。「クローン病は、病態を止めないと、食事すらできなくなってしまう。これを回避するべく、手術に踏み切るのだが、一度手術を行うと、2度目、3度目の手術のリスクが高まるのも特徴だ」と、悪循環に陥りやすい病態なのだと話していた。

 「クローン病の発症は、若年層に多く、日本では男性の比率が高い」と、10代や20代前半で発症する病気なのだと指摘する。「クローン病が完治する治療法はいまだに確立されていない」と、若年で発症した患者は、長期間病気と向き合う必要があるのだと訴える。「これまでは、栄養療法が主な治療法とされてきたが、2002年に生物学的製剤が登場し、治療法が大きく変化。まず寛解に導くことが可能となり、寛解を維持するための治療法も確立できるようになった」と、寛解導入療法と寛解維持療法を行うことで、患者のQOLを改善させることができるようになったのだと説明する。「生物学的製剤はこれまで2種類存在していたが、今回『ステラーラ』という従来と治療のターゲットが異なる生物学的製剤が導入されることで、患者の選択肢が格段に広がるものと期待されている」と、「ステラーラ」は、腸に炎症が起こる前に作用する薬であるため、これまでの生物学的製剤で副作用が見られた患者などに導入できるのではないかと期待を寄せていた。

 この後、クローン病および治療が患者の生活に与える影響に関する調査結果を報告。調査に参加した現在活動期の状態にある患者の72.5%以上が現在の治療計画に満足していないと答え、寛解状態の患者の61.9%が将来において治療の効果がなくなることを懸念していた。さらに、クローン病患者の65%が、長期にわたって治療の効果が継続するという安心感が得られることが最も重要であると回答した。診断年齢が20歳未満のクローン病患者の80%以上、20歳以上の患者の半数以上(52.2%)が、クローン病の症状により気まずい思いをしていると回答した。また、診断年齢が20歳以上の患者の外食(51.3%)、旅行(37.5%)、スポーツに参加すること(17.5%)、就学・就業(17.5%)、家族や友人を気軽に訪問すること(11.3%)など、やりたくてもできない事柄が多く、社会的孤立が日常生活の一部となっていることが調査結果からわかった。この結果について鈴木先生は、「クローン病は完治せず、再発する可能性が高いため、不安に思っている患者が多いことが改めて確認できた。発病は10代や20代前半と、ナイーブな世代でもあるだけに、病気のことについて相談することもできず不安に感じている患者も多いと思われる。クローン病では、外食や旅行など当たり前のことができないため、悩む患者は多いものと推察される」と、精神的な部分にも悪影響をおよぼす疾患であることが改めて示される結果であったとコメントしていた。

 この調査結果を受けて、クローン病患者の名良乃繭子さんと鈴木先生によるトークセッションが行われた。名良乃さんは、「最初は、腹痛の症状から、胃潰瘍なのではないかと診断された。しかし、トイレにすぐに行きたくなってしまうなど、症状は改善されず、親にも病気のことについて話しづらいこともあったため、痛くても我慢する日々が続いた」と、クローン病と診断されず、病院もたらいまわしにさせられたことで、なかなか周りに本当のことを言えなくなっていったと説明する。鈴木先生は、「クローン病の研究が進んでいる米国でも、診断がつくまでに5年もの期間がかかるといわれている」と、クローン病と見極めることは、非常に難しいのだと指摘する。「クローン病と診断された時は、この病気が一生治ることはないということを知らされてショックを受けた。ただし、寛解の可能性もあるという希望もあったので、病気としっかり向き合おうという気になれた」と、名良乃さんは、クローン病と診断された当初の心境を話してくれた。鈴木先生は、「クローン病は完治はしないが、早く診断することで、病態が良くなることができる。また、その状態を薬で維持することも可能だ」と、寛解によって普通の生活を長期間キープすることが可能であるのだと述べていた。

 クローン病の維持療法の治療薬として既承認品目である「ステラーラ皮下注45mgシリンジ(一般名:ウステキヌマブ(遺伝子組換え))」においては、今年3月にクローン病の適応追加の承認を取得。ステラーラは、炎症反応および免疫に深くかかわるインターロイキン(IL)-12およびIL-23を標的としており、既存の抗TNFα製剤とは異なる作用機序を有している。導入療法では、「ステラーラ点滴静注130mg(一般名:ウステキヌマブ(遺伝子組換え))」を体重換算に基づく用量で1回の静脈内投与を行い、維持療法では、「ステラーラ皮下注45mgシリンジ(一般名:ウステキヌマブ(遺伝子組換え))」90mgを通常12週間ごとに、効果減弱時には8週間ごとに皮下注射を行う。現在進行中の長期投与試験では、クローン病の症状を速やかに改善させ、最長2年まで継続して症状をコントロールできることを示した。

ヤンセンファーマ=http://www.janssen.co.jp



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