医療最前線

日本新薬、アルコール依存症に関するプレスセミナーを開催、久里浜医療センター院長の樋口進先生が日本初の減酒外来の取り組みを紹介

2017.04.06 15:25 更新

 日本新薬は、アルコール依存症に関するプレスセミナーを3月29日に開催した。今回のセミナーでは、日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立した日本最大の依存症治療施設である独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センターの院長で、この課題に長年取り組んでいる樋口進先生を講師に迎え、アルコール依存症の現状や、最新の治療法である減酒外来の取り組みについて語ってもらった。また、ソーシャルワーカーの立場から患者やその家族に寄り添っている久里浜医療センター 精神保健福祉士の藤田さかえ氏が、アルコール依存症の患者の社会復帰やその家族の支援に関する最新知見について紹介した。

 「依存とは、何かの物質を使用したり、ある活動をすることで、多幸感や快感が生まれ、それを求めすぎるがゆえに様々な問題が起こっている状態をいう。依存行動としては、渇望・とらわれ、コントロール障害、耐性、離脱症状、物質・活動中心の生活、問題を知っていながら止めないといったものが挙げられる。これらの依存行動の結果、肝臓障害やうつ病、家庭内暴力、虐待、飲酒運転、多額の借金、不登校などの健康・社会問題が生じてくる」と、依存とはどのような状態なのかを、久里浜医療センター 院長の樋口進先生が解説。「アルコール依存症に対する国内の取り組みとしては、2014年6月にアルコール健康障害対策基本法が施行された。その後、2016年5月にアルコール健康障害対策推進基本計画が策定され、2つの重点課題が掲げられた。1つめが、飲酒にともなうリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防すること。2つめが、アルコール健康障害に関する予防および相談から治療、回復支援に至る切れ目のない支援体制を整備することである」と、アルコール依存症による健康障害に対する取り組みが政府主導で進められていると述べていた。

 「一方で、アルコール依存症の患者は、数%しか治療の現場に訪れないといわれている。医療を受診すると、『アル中』と診断されたり、強制的に断酒させられるというイメージが強く、このことが治療から患者を遠ざけていると思われる」と、アルコール依存症患者の受診率は非常に低いのが実状なのだと嘆く。「久里浜医療センターでは、この受診率を上げるべく、今年4月から日本初の試みとして減酒外来を開始する。治療の選択肢として減酒を取り入れることで、アルコール依存症を含むアルコール使用障害者の受診への抵抗を減らし、より多くの患者が医療機関を受診するようになると考えている」と、国内初の減酒外来をきっかけに、アルコール依存症患者の受診率が向上することに期待を寄せていた。

 「減酒外来では、Harmu Reduction(害を減らす)の考え方を重視し、まずはアルコールで起こっている目先の害を減らすことを目的としたサポートを提供する。あくまでも、断酒が前提ではなく、受診者それぞれの目標に合わせたアルコールとの付き合い方を提案し、目標達成を支援していく」と、樋口先生は、減酒外来での治療方針を説明。「お酒の習慣が気になる、お酒をやめたくないが量を減らしたい、お酒に関する健康状態をチェックしたい、お酒とうまく付き合いたいなど、お酒について何か気になっていることがある人は、ぜひ足を運んでもらいたい」と、アルコール依存症の新たな治療手段として減酒外来を活用してほしいと話していた。

 続いて、久里浜医療センター 精神保健福祉士の藤田さかえ氏が、アルコール依存症患者の家族の実状や社会復帰の支援に関する取り組みを紹介した。「アルコール依存症患者の家族は、様々な困難を抱えている。例えば、繰り返される飲酒問題の解決に日々追われる、本人が飲酒問題を認めないため医療につながらない、暴力や暴言におびえる不安な毎日、子どもたちの成長への悪影響、地域社会や周囲からの孤立感などが挙げられる」と、アルコール依存症は、患者本人だけでなく周囲を巻き込んでいく病気なのだと強調する。「こうした困難を解決するためには、アルコール依存症に関する知識や、専門医療機関・相談機関に関する情報に、誰でも簡単にアクセスできる環境の整備が求められる。また、地域の中に家族を対象とした専門相談窓口を設置する他、自助グループによる患者や家族のサポートも重要であると考えている」と、家族が抱える困難を解決するために必要とされる援助について意見を述べた。

 「アルコール依存症患者の社会復帰においても、多くの困難が待ち構えている。アルコール依存症は、患者本人の自覚が薄く、再発性が高い。これに加えて、病気に対する社会の理解不足や援助者の苦手意識、地域における社会資源の不足なども社会復帰への障壁となっている」と、アルコール依存症患者の社会復帰は容易なことではないのだと力を込める。「社会復帰を支援するために、医療機関は、専門医療を充実させると共に、地域に開かれた入院体制、社会復帰を前提にした地域との連携体制、さらには再発性に対応する医療の構築が求められる」と、医療機関に必要な取り組みを指摘。「一方、地域社会には、アルコール依存症患者にオープンな援助の提供や援助者の理解・知識の向上、医療を中心にしない連携の充実、患者の個別性に応じた支援計画が必要になる。そして、社会全体でアルコール依存症に対する啓発を高め、医療・保険・福祉サービスのさらなる充実と整備が進むことを期待したい」と、アルコール依存症患者の社会復帰に向けて、地域社会全体で取り組んでいく必要があるのだと訴えた。

日本新薬=http://www.nippon-shinyaku.co.jp/


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