医療最前線

塩野義製薬と日本イーライリリー、「サインバルタ」の適応追加承認取得を受け「変形性関節症に伴う痛みの治療」に関するセミナーを開催

2017.01.31 18:56 更新

 塩野義製薬と日本イーライリリーは1月26日、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「サインバルタ カプセル20mg・30mg」について、「変形性関節症に伴う疼痛」に対する適応追加の承認取得を受けて、「変形性関節症に伴う痛みの治療戦略-今までとこれから-」と題したセミナーを開催した。セミナーでは、島根大学医学部整形外科学教室 教授の内尾祐司先生を招き、変形性関節症治療の現状と最新事例、患者とのコミュニケーションの重要性、患者ごとの治療ゴール設定のポイントなどについて、臨床の経験に加え、患者と医師を対象に塩野義製薬と日本イーライリリーが実施した変形性関節症の痛みに対する意識・実態調査の結果を交えて紹介してもらった。また、日本イーライリリー 臨床開発医師の榎本宏之先生が、「サインバルタ」の「変形性関節症に伴う疼痛」に対する適応追加について、国内第III相臨床試験の結果を中心に説明した。

 「日本は、超高齢社会を迎え、運動器疼痛を抱える人が増えている。とくに慢性疼痛の部位として膝は26%にも及ぶ。この変形性膝関節症は2530万人とされ、うち男性では1/4、女性では1/3が痛みを有している」と、高齢化とともに、変形性膝関節症を訴える人は増えているのだと、島根大学医学部整形外科学教室 教授の内尾祐司先生は指摘する。「要支援、要介護の原因となった疾患として、変形性膝関節症は、要支援の第1位となり、要介護では第5位であった」と、QOLを低下させる疾患なのだと訴える。そこで、変形性関節症の痛みに関する患者・医師の意識調査を行った(変形性関節症患者516名と変形性関節症の治療経験のある整形外科医110名)。変形性関節症による痛みによって、立ち上がる、しゃがむといった日常生活に欠かせない動作に支障がある患者は65.3%だった。また、家事に支障があるは62.3%となり、最もひどかった時期に支障をきたす頻度は約7割が週2~3日以上と回答した」と、日常の生活に大きな支障を及ぼすのが変形性関節症であることが改めて確認できた。「変形性関節症は、痛みによる行動の制限によって、普段通りの生活が送れない、周囲とのコミュニケーションに支障が出るといった、二次的な問題を引き起こす可能性がある」と、普段の自分でいられないと思うことがあることも調査で明らかとなった。

 「変形性膝関節症の患者にどんな薬を望んでいるのか聞いたところ、除痛を希望していることがわかった。そこで、治療では、症状の緩和・除去による除痛および、病変の進行阻止、予防から、日常生活動作の拡大や生活の質の向上を目指している」と、変形性膝関節症の治療において目指すべき方向性について言及してくれた。「治療に関して、炎症等の侵害刺激は主に末梢で起こっており、その治療には抗炎症薬(NSAIDs)が主に使用される。変形性関節症に伴う痛みの原因の一つとして、下行性疼痛抑制系の機能異常が考えられている。それは、侵害刺激が繰り返されることで起こると考えられている」と、痛みの治療と変形性関節症のメカニズムについて解説。「変形性関節症による痛みは、炎症性の痛みに加えて、下行性疼痛抑制系の機能減弱等による痛みについても考慮することが重要」と、痛みの原因に応じた治療が必要なのだと訴える。「医師への調査結果によれば、85.5%が変形性関節症による痛みは、主に炎症を含む侵害受容性疼痛であると捉えている」という。

 「患者は、42.8%が現在の治療状況に満足していると回答。医師は56.3%が、患者が治療状況に満足していると思うと回答した」と、患者と医師の満足度のギャップがあることが明らかとなった。「治療に満足していない患者の6割がそのことを医師に伝えていない。また、満足していない理由には、期待した鎮痛効果が得られなかったが65.6%もあった」と、痛みが除去できないため、多くの患者が満足度が低いと回答していた。「普段の治療の際に痛みによる生活の困難について、医師に伝えないことがある患者は約4割だった。その理由は、加齢によるものといわれているから伝えても仕方がないが36%に達した」と、患者は、加齢や筋肉の衰えといった、改善が難しいことが変形性関節症の原因であると認識しているとも回答していた。このため、どうしようもないとあきらめてしまう患者が約4割に達した。「医師と話し合い、しっかりと治療目標を設定した患者は満足度が上がる傾向にある。患者と医師とのコミュニケーションが治療満足度を上げるポイントとなる可能性がある」と、内尾先生は示唆していた。

 「変形性関節症の保存療法は、痛みを和らげることを目的に、運動療法などと組み合わせて行い、悪循環を断ち切ることが重要となる」とのこと。「調査においても、変形性関節症による痛みの治療において、薬物療法により痛みが和らぐことで、医師から指示された運動や体操に取り組みやすくなると回答した患者は58.4%に達した」と、痛みが和らぐと良循環が生まれるのだという。「それだけに、炎症性の痛みに加えて下行性疼痛抑制系の機能減弱等、中枢神経の機能異常による痛みについても考慮することが重要であり、痛みの原因に応じた治療が必要だ」と、内尾先生はまとめていた。

 変形性関節症に伴う疼痛へのデュロキセチン(販売名:サインバルタ)の適応追加について、国内第III相臨床試験の結果を中心に、日本イーライリリー 臨床開発医師の榎本宏之先生が説明を行った。「サインバルタは、世界で6900万処方された薬剤で、世界では、様々な疼痛に関する適応を取得している」と、多くの国で活用されている治療薬なのだと訴える。「サインバルタはセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、下行性疼痛抑制系を賦活させることによって鎮痛効果を示すと考えられる」と、サインバルタの作用機序について言及。「有効性については、国内第III相プラセボ対照試験において、サインバルタ群はプラセボ群と比較し、有意な鎮痛効果を示した。さらに、国内第III相継続投与試験においては、長期にわたり鎮痛効果が継続した」と、試験結果について紹介してくれた。「安全性についても、国内第III相プラセボ対照試験および国内第III相継続長期投与試験における副作用(臨床検査値異常変動を含む)発現率は、49.6%(113例/228例)だった。主な副作用は傾眠(14.5%)、便秘(13.2%)、口渇(12.7%)、悪心(9.2%)、倦怠感(5.7%)、食欲減退(3.9%)だった」と、大きな副作用等は認められなかったと話していた。

塩野義製薬=http://www.shionogi.co.jp/
日本イーライリリー=https://www.lilly.co.jp/


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