医療最前線

塩野義製薬、疼痛治療における乱用防止製剤の意義と重要性についてセミナーを開催、「オキシコドン塩酸塩水和物 乱用防止徐放剤」の製造販売承認申請も

2016.12.16 20:59 更新

 塩野義製薬は、11月30日に「オキシコドン塩酸塩水和物 乱用防止徐放剤」の製造販売承認申請を行い、あわせて「中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛」についても適用拡大に向けた申請を行った。その一方、米国では医療用麻薬の実消費量が、適性使用の2倍を超えるなど、乱用が社会的に問題視されている。こうした状況を日本でも発生させないために、医療用麻薬の適正使用推進と同時に薬物乱用リスクの啓発活動の必要性から、12月14日に世界保健機関薬物依存性専門委員会メンバーで星薬科大学 特任教授・名誉教授の鈴木勉先生を招き、疼痛治療における乱用防止製剤の意義と重要性についてセミナーを開催した。

 「当社は、1980年代にモルヒネ製剤の開発からがん疼痛治療薬の開発をスタート。2015年には啓発WEBサイト『がんのつらさ』を開設した」と、塩野義製薬 疼痛緩和推進室の藤井彰室長が挨拶。「今年は『つらさ軽減プロジェクト』を発足し、がん患者の意識や行動に関する実態調査を行ってきた」と、全国のがん患者会と協力しながら、がん疼痛に関する啓発活動を行っているという。「当社は、2003年に『オキシコンチン錠』を発売。今回、持続性疼痛治療剤『オキシコドン塩酸塩水和物 乱用防止徐放剤』の製造販売承認申請も行った」と、より多くの患者に服薬してもらうべく、ラインアップを拡充するのだという。「今後も患者のために、社会と共に成長していくことをビジョンに掲げていく」と、2020年に向けて個人が生き生きとした社会づくりに貢献していきたいと話していた。

 次に、星薬科大学 特任教授・名誉教授の鈴木勉先生が「疼痛治療における乱用防止製剤の意義と重要性」について講演を行った。「医療用麻薬による慢性疼痛治療の課題は、乱用が起こる可能性があるため、これを未然に防ぐ必要がある。このため、医療用麻薬による慢性疼痛の治療方針として、痛みの程度の改善にとらわれず、日常生活の改善を目標にすることが重要となる」と、医療用麻薬の普及啓発と同時に薬物乱用リスクの普及啓発活動も必要になると説く。「がん性疼痛は、痛みをできるだけゼロにすることが求められる一方、非がん性の慢性疼痛は、障害され問題となっている日常生活を捉えて、その改善を目指す」と、がん性疼痛と慢性疼痛の医療方針の違いを解説。「オピオイド鎮痛薬は、がん性の場合は依存性はほとんどないが、慢性非がん性では依存性の可能性がある」と、慢性疼痛患者に対して、オピオイド鎮痛剤を使う場合には注意が必要なのだと訴える。

 「そもそも麻薬とは、ケシや大麻、コカなどを原料としており、ケシは鎮痛剤として医療用にも利用されている。またコカも局所麻酔薬として、覚せい剤は睡眠治療や麻酔からの覚醒促進として医療現場で用いられている」と、薬物は医療目的に使われているのだという。「ただし、国際条約における麻薬に対する単一条約や向精神薬に関する条約を受けて、あへん法や大麻取締法、麻薬および向精神薬取締役法、覚せい剤取締法が照合された」と、わが国では法律によって麻薬を厳しく規制している。「しかし、個人輸入した医薬品を調査したところ、睡眠鎮静薬を個人輸入した人は9.5%にも達している」と、乱用のリスクが考えられる医薬品を個人輸入している人がいることが明らかになったという。「このため、エチゾラムおよびゾルピデムを第3種向精神薬に指定。乱用防止につながっている」と、規制薬物を強化していると教えてくれた。

 


 「各国の医療用麻薬の必要量と消費量を見てみると、モルヒネにおいては、日本は必要量の15.1%程度しか使われていないが、カナダや米国、ドイツ、デンマーク、オーストラリアでは、消費量が必要量を上回っている」と、必要以上に医療用麻薬が使用されている国もあるのだという。「とはいえ、日本が必要量に比べて消費量が極端に少ない背景には、教育現場において、間接的安楽死の記載に、モルヒネ等の鎮痛薬の継続的投与による苦痛緩和・除去の付随的効果として死期が早まる場合を指すとある」と、医療用麻薬によって、痛みを緩和し延命できる場合があるということが、正しく理解されていないのだと警鐘を鳴らす。「日本で、医療用麻薬の理解が進まないのは、米国が薬物乱用によって死亡が多発していることも影響している」と、米国では、自動車あるいは銃器による死亡者数を薬物の過量投与による死亡者数が上回っているという。「こうした現状を鑑み、新剤形のオキシコンチン錠を開発。従来品では、歯で噛み砕くことで血中濃度を急速に高めてしまう危険性があった他、液体にして、直接注射針で血液に混入することも可能だった。しかし、新剤形では、歯で噛み砕くことは困難で、液体にすることもできないことから、乱用低下につながった」と、新剤形の登場で依存・乱用は減少したと述べていた。

 「わが国では、がん性疼痛は致死的であり、痛みを消失させることが求められている。一方、慢性疼痛では、痛みの評価と同時に、痛みにより障害されている日常生活を捉える(QOLの改善)ことが重要となる。しかし、痛みの消失に注力すると、依存に陥ることがある。日本でも危険ドラッグにオピオイド系薬物が含まれていることから、これらを使用している乱用者が処方薬(オピオイド鎮痛薬など)に移行する可能性もある。これを未然に防止する必要がある」と、日本における医療用麻薬の今後についてまとめてくれた。

 塩野義製薬の澤田拓子専務は、「鈴木先生から、米国で乱用防止製剤が登場し、乱用問題も少しずつ緩和してきているという指摘を受け、独自の調査を行った結果、確かに死亡件数も減少していることがわかった。そこで今回、『オキシコドン塩酸塩水和物 乱用防止徐放剤』の製造販売承認申請を行うことにした」と、新剤形の申請に関する経緯について紹介。「しかし、疼痛治療に対する患者へのアクセスが不十分であると感じている。本当に必要としている人に、必要な量を提供し、乱用になってしまわないような対策も、製剤普及と平行して行っていきたい」と、適切な使用の必要性の訴求は継続して行っていくことを確認した。

塩野義製薬=http://www.shionogi.co.jp/


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