医療最前線

「女性の健康週間」プレスセミナーを開催、風疹の流行や卵子老化の問題・母体血を用いた出生前検査について報告

2014.01.28 19:45 更新

 「女性の健康週間」は、産婦人科医が女性の健康を生涯にわたり総合的に支援することを目指し、3月3日のひな祭りを中心に3月8日の国際女性の日までの8日間を「女性の健康週間」と定め、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会の共催でスタートした。2008年からは、厚生労働省も主唱する国民運動として、女性が生涯を通じて明るく、充実した日々を自立して過ごすことを総合的に支援するべく、国や地方公共団体、関連団体が一体となり、さまざまな活動を展開することとなった。その活動の一環として、1月17日には「女性の健康週間」プレスセミナーを開催。女性の健康への関心や知識の向上、さらには女性を取り巻く健康課題に対する社会的関心の喚起を図るべく、今年は3つのセッションに分けて、最新情報を報告した。

 「ひな祭りを中心に、3月8日の国際女性の日まで(3月1日から8日)を『女性の健康週間』と定めているが、この期間に限らず、年間を通じてさまざまな活動を行っている」と、熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学教授、日本産科婦人科学会男女共同参画・女性の健康週間委員会委員長の片渕秀隆先生が挨拶。「日本人女性は平均86歳まで生きる。更年期、老年期も健康であるために、“私たちには主治医がいます-生涯主治医がいる安心を-”をモットーに産婦人科医が女性の健康をサポートしていくことを訴える活動を行っている」と、女性には産婦人科医がついているということを知らしめる活動を行っているという。「毎年『女性の健康週間』で掲げるポスターには、女性三世代の健康を守るという想いが込められたものになっている」と、三世代の女性の笑顔が印象的なポスターで、産婦人科医が女性のパートナーであることをアピールしているという。「今年は、女性の生涯健康手帳の配布やイベントを開催。また、都道府県産科婦人科学会の市民公開講座も全国で実施する」と、女性自身が身体のことを考えるようにとの思いから、妊娠や更年期をテーマにしたセミナーなどを開催すると話していた。「『女性の健康週間』を前に行う今回のプレスセミナーでは、風疹の流行、卵子の老化、出生前検査といった旬な話題を提供することで、女性を取り巻く健康課題に対する社会的関心の喚起を促していきたい」と、セミナー開催の趣旨について説明した。

 第一セッションでは、独立行政法人国立病院機構横浜医療センター 産婦人科部長、日本産科婦人科学会男女共同参画・女性の健康週間委員会委員の奥田美加先生が、「すべての胎児を風疹から守るために すぐに始めなければならないこと」と題したセミナーを開催した。「昨年は風疹が大流行した。風疹に対する免疫をもたない女性が、妊娠初期に風疹にかかると、胎児に影響が出ることがあり、先天性風疹症候群(CRS)という。近年、年間0~2例程度だったCRSの報告数が、2012年には4例、2013年には29例にまでのぼっている」とのこと。「現在の麻疹・風疹混合ワクチンの定期接種は、1歳時と小学校入学前の1年間の2回接種となっている」と、定期的なワクチン接種が行われているという。「しかし、風疹が大流行した背景には、日本は風疹感受性者をなくすような実効的なワクチン施策に至っていないことがある」と、今回の流行は予測できたものであると語気を高める。「風疹は、女性と妊婦周辺の人だけが免疫をもっていても防ぐことはできない。予防接種歴や抗体測定歴があっても、風疹患者との濃厚な接触ではCRSとなりうる。女子中学生だけを接種対象にしてきた日本では、風疹の流行を抑制することはできない」と、摂取対象者が女性に限られている点に問題があると指摘する。

 


 「昨年の流行の中心は20~40代の男性と20代の女性。流行が本格化した時、ワクチン接種を推奨したのだが、想定外の患者数に達し、ワクチンが足りなくなってしまった。そこで、これまでの定期接種の2回目を延長するなどして対応した。延期してのち確実に接種されればいいが、忘れられたりすると、再流行を引き起こすことが懸念される」と、らせんのように風疹の大流行は発生してしまうと奥田先生は警鐘を鳴らす。「今回の大流行は以前からわかっており、妊婦の夫世代が危険であるといわれていた。1979年4月2日から1987年10月1日生まれの男女は、何時でも定期接種が受けられる制度に変更されたものの、情報が十分に伝わらず、接種率は上昇しなかった。また、1979年4月2日以前に生まれた男性の定期接種機会はなかった。この予防接種の機会が風疹患者数に影響していることは明らか」と、定期接種がなかった夫婦世代が、妊娠期を迎えたことで大流行してしまったと話していた。

  


 「風疹の流行を回避する方法としては、実効性のあるワクチン接種施策が求められている。風疹そのものをなくさないと、悲しい思いをする親子をなくすことはできない。麻疹・風疹混合ワクチン定期接種が現行の2回接種になる前の世代全員に、たとえ1回受けたことがあるかもしれない人でも、2回目と考えてワクチン接種を提供してほしい。そして一日も早く、日本が『風疹排除宣言』できるようにしたい」と、風疹自体を根絶するようなワクチン接種施策が必要だと力説する。「妊娠をしてから、周囲が気をつけてあげても全く間に合わない。だからこそ全員にワクチンを提供する必要がある」と、CRSのリスクが高いのは妊娠のごくごく初期であるがゆえに、妊娠がわかった時点では手遅れといわざるを得ないという。「CSRになるかもしれないという不安を与え、妊娠をあきらめてしまうケースもあり得る。適切な対応をして、広い意味で胎児を風疹から守る必要がある」と、風疹の影響を受けたかもしれない胎児への正しい評価の必要性なども重要であると訴えた。

 第二セッションでは、日本医科大学産婦人科教授の竹下俊行先生が「卵子の老化を考える」をテーマにセミナーを行った。「生殖器の老化は他の臓器の老化に比べ早い。つまり卵子は老化する」と説明する。「加齢による卵子の影響としては、まず卵子数が減少する。出生児200万個あった卵子は初経時30万個に減り、以後どんどん減っていく」と、1日30個ずつ減る計算にあると指摘。「また、卵子細胞質の劣化もある。酸化ストレス、活性酸素などによってミトコンドリア機能障害を引き起こしたり、たんぱく質の糖化現象によって、卵子の老化を進行させてしまっている」と、加齢による卵子の影響について言及してくれた。「さらに、母体の加齢によって染色体異常卵が増加する。減数分裂時に染色体不分離を起こしやすくなる」と、染色体異常も老化の要因と解説してくれた。

 


 「卵子の老化に対する対策としては、生殖適齢期に関する正しい知識・認識を普及させること。これに尽きる。さらには、卵子老化の防止策や未受精卵子の凍結、卵子提供なども考えられる」と、卵子は老化し、生殖適齢期があるのだということを知る必要があるとのこと。「だが、卵子の老化防止策は現在有効なものはないとされている。また、未受精卵子の凍結においても、悪性腫瘍の治療など医学的介入により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合と、加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合の2つがあるが、妊娠・分娩時期を先送りを推奨するものではないとの記載がガイドラインにもあるように、後者のケースは医療とは考えにくい」という。「卵子提供においては、10年間議論が進展していない。その一方で、卵子提供による分娩数は21年度調査時に比べて約3倍に増加。平均年齢は45.2±6.5歳であった。早産率が高く、分娩時出血量も多い。また、何らかの妊娠合併症を有していた症例は68%であった。合併症の多くは、母体の加齢に起因するものであるが、母児間免疫学的不均衝に起因するものもあると考えられた」と、卵子提供の問題点についても説明してくれた。

 「卵子の老化に対する対策として、提供された卵子を用いた細胞質置換および核置換の技術もあるが、遺伝子の改変につながる可能性があるため、当分の間、生殖補助医療に用いることは認められていない」とのこと。「以上の点からも、卵子は老化するということを知り、妊娠・分娩には適切な年齢が存在するということを理解してほしい」と、竹下先生は、女性の妊娠力について正しい知識をもつことがいかに重要であるかを説いてくれた。

 第三セッションでは、昭和大学医学部産婦人科学講座教授の関沢明彦先生が「新しい母体血を用いた出生前検査の現状」についてセミナーを行った。「高年妊娠は25万人を超えている。40歳以上の分娩も確実に増加している。出産年齢の高年齢化にともなう母体側・胎児側双方での様々なリスクの上昇について、基本的な知識の啓発もしくは教育が必要である」と言及。「母体の安全のため、周産期予後を改善するために、妊娠中の超音波検査が行われている。患者側は、性別や動いている胎児、顔が見たいといったことを超音波検査で期待している。しかし、医師としては、胎児の発育などの評価をしている」と、妊婦側と医師側では検査の目的に乖離がみられるとのこと。「このため、妊娠中に赤ちゃんの元気な姿が見れる反面、正常でない所見が突然見つかることがある。こうした出生前診断では、妊婦の不安と向かい合い、正確な情報提供と、それに基づいた妊婦個々の自律的な意思決定が重要で、それを支えるのが遺伝カウンセリングとなる」と、心理学的影響および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセスが重要になるという。

 


 「そこで、現在行われている胎児染色体検査法としては、非確定的検査と確定的検査、新世代の遺伝学的検査がある。母体血漿中胎児cell-freeDNAでは、大部分が絨毛細胞に由来し、出産後2時間で母体の血中から消失。妊娠早期から検出可能で、比較的高濃度に存在することから、出生前診断に適しているとされている」とのこと。「母体血漿中DNAを用いた胎児染色体診断では、マイクロアレイに相当する微小なDNA量の変化が評価できるようになり、微細なDNA変異・変化も評価可能である」と、母体血を用いて胎児の遺伝子全体を評価可能であるという。「ただし、胎児遺伝学的検査の進歩に対応できる情報提供体制や遺伝カウンセリング体制の整備が必要だ」と、検査した結果をしっかり伝えられる体制が整っている必要があるのだと説明していた。

 


 「こうした点を受けて、NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)コンソーシアムを設立し、臨床研究を行ってきた。研究から見えてきたものは、検査提供体制をどのようにしていくか、検査をどのような位置づけで使用していくか、社会福祉体制の充実も必要であることであった。NIPTの対象疾患の広がりについては、現在、3種類の染色体数的異常が検査対象となっている。性染色体の数的異常、染色体の微小欠失・重複などに対象が広がっている。今後、重篤な遺伝性疾患に検査対象が拡大していくと思われる。成人後に発症する遺伝性疾患についても無侵襲的に検出可能になる。さらに、体質と関連するような遺伝子変化についても検査可能になる」と、懸念材料についても解説してくれた。

 今回のセミナーで司会進行を務めた、亀田メディカルセンター主任産婦人科部長、日本産科婦人科男女共同参画・女性の健康週間委員会副委員長の清水幸子先生は、「女性の健康に関する問題について、様々な情報を『女性の健康週間』で発信していく予定だ。東京だけでなく全国各地で市民公開講座も開催されるので、ぜひ多くの人々に足を運んでほしい」と、女性の健康をサポートする立場として、情報提供についても積極的に行っていく考えを示した。

日本産科婦人科学会=http://www.jsog.or.jp/
日本産婦人科医会=http://www.jaog.or.jp/


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