医療最前線

富士経済、国内医療用医薬品全体市場の総括分析、2020年にはインフルエンザウイルス治療剤が早期受診患者増や治療剤の適応拡大で325億円に成長

2013.11.22 15:44 更新

 富士経済は、医師の診断に基づいて処方される医療用医薬品について、国内市場の動向を12年1月~13年9月にわたり6回に分け調査した。その第6回目の調査結果を報告書「2013医療用医薬品データブック No.6」にまとめた。トピックスとして、2020年にはインフルエンザウイルス治療剤が、早期受診患者増や治療剤の適応拡大で325億円に成長すると予測した。また、2020年の国内医療用医薬品全体市場は、高齢化の進展を背景に、2012年比17.5%増の9兆6177億円に拡大すると予測した。報告書No.6(第6回目報告)では、感染症領域、ワクチン製剤、眼科・耳鼻科疾患治療剤、栄養補助剤、消毒剤、漢方製剤の国内市場動向を収載し、加えて第1回から第6回に調査対象とした医療用医薬品の市場動向を総合的に分析した。

 注目市場であるワクチン製剤では、ジフテリア、ポリオ、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、インフルエンザ、日本脳炎、肺炎球菌、BCG、コレラ、百日せき、A型・B型肝炎、Hibワクチン、ロタウイルスワクチン、子宮頸がん予防ワクチンなどの不活性ワクチン、トキソイド、生ワクチンを対象とした。予防接種法に基づく定期接種ワクチンと任意接種ワクチンに区分される。定期一類疾病予防接種に用いられるMR(麻しん、風しん混合)ワクチン、日本脳炎ワクチン、ポリオワクチン、DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風)ワクチンは安定した需要を獲得している。また、2008年から2012年にかけて、Hibワクチン、子宮頸がん予防ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチン、不活化ポリオワクチン、4種混合ワクチン(DPTワクチン+ポリオワクチン)が相次いで発売され、新規の需要を取り込み市場が拡大している。インフルエンザワクチンは、2009年から2010年にかけて新型インフルエンザの流行により、市場が大きく拡大した。季節性インフルエンザワクチンは、流行の程度や接種率の変化などによる需要の変動はあるものの今後はおおむね横ばいで推移すると予測される。一方で、新たな新型インフルエンザウイルスが流行した場合は、季節性インフルエンザワクチンに上乗せされて市場が大きく拡大するとみられる。

 子宮頸がん予防ワクチンは、2009年11月に「サーバリックス」(グラクソ・スミスクライン)が発売され、市場が立ち上がった。市区町村における独自の助成が広がり、2011年4月から厚生労働省による子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業がスタートしたことで、急激な需要拡大が続いた。2013年4月からは予防接種法における定期接種化がなされており、今後は安定した需要が予測される。

 インフルエンザウイルス治療剤では、抗ウイルス剤のうちインフルエンザに適応する治療剤(経口剤、吸入剤、注射剤)を対象とした。市場は、2009年に新型インフルエンザの流行で大幅に拡大したが、ここ数年は落ち着いている。2012年は前年比58.7%増の284億円となったが、インフルエンザの流行よりも、吸入剤の「イナビル」(第一三共)など新製品の浸透や受診患者の拡大が影響したとみられる。各健康保険組合における助成金の整備や医療機関での啓発活動等により、予防ワクチンの接種率が上昇している。予防ワクチンの浸透は治療剤市場にも影響を与えるとみられる。一方、今後は医療機関を早期に受診する患者の増加や既存品の適応拡大に伴う処方機会の増加などにより、2020年の市場は2012年比14.4%増の325億円が予測される(インフルエンザの流行は規則性がなく予測は困難であるため、市場規模予測には考慮していない)。

 角結膜上皮障害・ドライアイ治療剤では、ドライアイ研究会による「2006年ドライアイ診断基準」の定義では、ドライアイとは様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴うとされている。ドライアイは高齢者に多い疾患であるが、パソコン、スマートフォン使用者の増加、また長時間の使用によりドライアイに気を遣う若年者、中高年者が増加している。しかし、一般用医薬品の使用やサプリメントの服用も多いため、医療用医薬品を処方されている患者数は潜在患者と比較するとまだ少ないとみられる。パソコン、スマートフォン使用者は今後も増加し、より低年齢化していくと考えられることや、罹患率の高い高齢者数の増加を背景に、ドライアイの患者数は拡大するとみられる。それに伴い2020年の市場は2012年比31.8%増の435億円が予測される。

 2012年の国内医療用医薬品市場は、前年比2.6%増の8兆1843億円となった。2004年以降、市場は年々拡大しており、2020年には2012年比17.5%増の9兆6177億円が予測される。ジェネリック医薬品の普及拡大や薬価改定の影響といったマイナス要因によって成長率は低下するものの、高齢化の進展もあり、 医療用医薬品市場は着実に成長するとみられる。疾患・薬剤領域別に見ると、2012年は、循環器官用剤が構成比の17%を占めている。また、代謝領域、抗がん剤が共に9%台で、両領域は年々市場構成比を高めている。他にも、中枢神経領域や整形外科領域などの市場規模の拡大が予測され、全体市場の成長に貢献するとみられる。

[調査方法]富士経済専門調査員による業界関連企業、団体へのヒアリング調査と一部文献調査
[調査期間]7月~9月
[小売価格]
 書籍版:17万8500円
 PDF/データ版:18万9000円
 書籍版+PDF/データ版セット:19万9500円
(すべて税込)

富士経済=http://www.group.fuji-keizai.co.jp/


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