健康食品・医薬品

林原、「第21回トレハロースシンポジウム」を開催、トレハロースの最新研究成果について幅広い分野から学術発表、トレハロースを活用した商品の紹介も

2017.11.24 17:35 更新

 林原は、トレハロースの研究・開発に携わる関係者が参加し、分野の枠を越えて学術的交流を行う研究発表会「第21回トレハロースシンポジウム」を、東京・御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター ソラシティホールで11月16日に開催した。今回のシンポジウムでは、2部構成でそれぞれ3題ずつ、全6題の講演が行われ、トレハロースに関する最先端の研究成果について発表された。また、特別企画として「トレハロース採用品の紹介」の時間を設け、トレハロースを使用した商品を展開する3社から、トレハロースの機能を活かした商品の特長などが紹介された。

 トレハロースシンポジウムの講演第1部では、まず、岡山大学大学院環境生命科学研究科の舟橋弘晃氏による「豚精子の凍結保存におけるトレハロースの有効性」について発表が行われた。哺乳動物精子の凍結保存には、細胞膜透過性のグリセロールが凍結保護物質として広く用いられているが、ブタ精子の凍結融解後の受精能は依然低く、改善が必要であるという。トレハロースは、細胞膜の透過性が低い凍結保護物質であり、細胞膜やタンパク質を安定させる働きがあることが知られている。そこで、舟橋氏の研究では、凍結保護物質であるグリセロールをトレハロースに置換した場合のブタ凍結精子の生存能や体外受精能を評価。グリセロールをトレハロースに置換しても、凍結融解後の精子の生存率に影響はなかったが、精子の運動性、ミトコンドリア膜活性、受精に重要な先体部位の正常性、および体外受精率が有意に改善されたという。これらの結果から、ブタ精子の凍結保存時にグリセロールのトレハロースへの置換が精子の融解後の品質維持に有効であることを明らかにした。講演では、さらにトレハロースを基礎とした凍結保存液中でのブタ凍結保存精子の品質改善に関する試みについても紹介していた。

 続いて、ミルボン 開発本部の伊藤廉氏による「毛髪内タンパク質の変性・凝集を抑制するトレハロースの化粧品への応用」について発表が行われた。ヘアカラーやヘアアイロンなどの美容施術は、ヘアデザインを楽しむうえで必要な美容施術である一方で、ヘアカラー剤に含まれるアルカリや、180度を超えるアイロン熱の付加によって、毛髪がダメージを受けることが知られている。タンパク質科学からの視点では、毛髪の約80%を構成するタンパク質はアルカリや熱によって変性・凝集を起こし、好ましくないダメージ現象を誘発させると想定される。しかし、これまでこうした視点に立った研究報告事例が少なく、製品開発のボトルネックとなっているのが実状だ。そこで、今回の研究では、毛髪内から抽出したタンパク質を用いて変性・凝集抑制効果のある成分のスクリーニングを実施したという。講演では、研究の詳細について説明すると共に、研究の結果、トレハロースが熱凝集の抑制に有効であるという結論に至ったと報告した。

 3題目の発表では、「トレハロースで調理食品の品質をコントロール!」と題し、林原 糖質事業本部の池上庄治氏が講演を行った。近年、単身世帯の増加や女性の雇用の増加などを反映して、中食・外食の利用が増え、消費者が手軽で、より美味しい商品を求めるようになっている。そのため、各メーカーも品質を向上させる技術や素材の開発に力を入れている。こうした中で、トレハロースは、販売以来、食品の風味保持や食感改良、日持ち向上などの目的で、和洋菓子、製菓、フルーツ、野菜、畜肉、水産加工など様々な分野に利用されてきた。とくに、調理食品において主食となる米飯、めん、パンへの利用も増え、すし店やパスタ専門店などの外食でも利用されることが多くなり、プロの料理人からも高い評価を得ているという。講演では、トレハロースの米飯・めんへの利用を中心に、調理食品での品質をコントロールする技術や実例が紹介された。

 第1部が終了すると、特別企画「トレハロース採用品の紹介」が行われ、ケイ・エイム・ナチュラル、EN VEDETTE(アン ヴデット)、タナカ製麺所の3社がトレハロースを使った商品の特長について紹介してくれた。ケイ・エイム・ナチュラルは、青森県南津軽郡にあるフリーズドライに強みを持つ食品加工会社。「当社とトレハロースとの出会いは、弘前大学の恩師の紹介がきっかけで、10年以上前からフリーズドライ技術にトレハロースを活用している」と話すのは、ケイ・エイム・ナチュラルの平俊隆代表取締役。果物をフリーズドライする際にトレハロースを使用することで、凍結時の冷凍ダメージを防ぎ、製品の縮みが起こりにくくなり、フリーズドライ製品を水で戻した際の復元率も向上したという。また、吸湿抑制の効果も認められたとのこと。さらに、旬の季節が過ぎてもいつでも食べられる果物を、輸送にも耐えられる状態で顧客に提供できるのもトレハロースのメリットであると語っていた。

 EN VEDETTEは、岐阜県出身の森大祐オーナーパティシエが2016年10月に東京・清澄白河に開いた洋菓子店。森オーナーパティシエは、2年前から林原とともに糖の勉強会を続け、現場では、トレハロースを始めとする林原の糖を複数組み合わせ、その特性を菓子作りに活かしているという。現在、店舗では、2013年に新歌舞伎座の開場記念土産として開発した「KABUKU~へん」をブック型に変えた「リーヴルクーヘン」を販売しており、「『KABUKU~へん』には使っていなかったトレハロースをクーヘン生地に使用することで、焼色と食感の調整が容易になった。また、生地の保湿性や時間経過後の油分の酸化臭の抑制などに効果を実感している」とのこと。さらに、「センターのパート・ド・フリュイにもトレハロースを使用することで、ダレにくくなり品質も安定し、煮詰めた際にも焦げ臭が発生しにくくなった」と、森オーナーパティシエは、トレハロースの使用によって大幅に品質を高めることができたと話していた。

 タナカ製麺所は、岡山県南西部の鴨方町で、「たなかのうどん」ブランドで乾麺製造を営む創業77年の老舗製麺メーカー。「たんわり感を大事に、やさしくやわらかな口当たりと、噛むとほどよく跳ね返してくるような弾力とコシの両立」にこだわり、商品開発に取り組む中、トレハロースに出会ったという。当初は、トレハロースの使用に抵抗感があったが、もともと自然界に存在することや、様々な可能性を秘めた糖質であることを知り、「機能性に特化した乾麺を作りたい」との思いでトレハロースを試用。すると、メインで使用している国産小麦粉との相性が抜群で、製麺性が向上したとのこと。こうして誕生したのが「たなかのうどん【トレハロース入り】」と、「たなかのそうめん【トレハロース入り】」。製麺へのトレハロースの使用には、従来品に比べて茹で時間を2~3割程度短縮できると共に、茹で伸びが少なく、茹で上がり後の麺のコシも保たれるという効果が見られたとしている。

 休憩をはさんで、講演の第2部がスタート。4題目は、東京理科大学薬学部の樋上賀一氏が「トレハロースの細胞防御機構」について発表した。オートファジーは、タンパク質や細胞内小器官を分解・再利用し、細胞内恒常性を維持する機構で、その異常は、生活習慣病や酸化ストレスとの関連性が報告されている。樋口氏の研究では、肥満症脂肪組織でオートファゴソームが蓄積することを見出したという。今回、オートファジー誘導剤であるトレハロースが種々の細胞へ及ぼす影響を解析。マウス由来肝癌細胞において、(1)トレハロースはオートファジーを亢進した、(2)抗酸化経路の1つであるKeap1-Nrf2経路の活性化を介して活性酸素種の産生を抑制した、(3)リソソームの主要な調節因子であるTFEBの核内移行を促進した--という3つの点を明らかにした。マウス由来脂肪細胞に対しても、この3点は同様だったが、顕著なTFEBの核内移行は観察されなかった。これらのことから、トレハロースは細胞種によって異なる細胞防御機構を有することが示唆されたと説明した。

 5題目では、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の宮井久敬氏による「抗がん剤投与ラットにおけるトレハロースの口腔粘膜炎予防効果」について発表が行われた。口腔粘膜炎は、がん化学療法における有害事象の一つで、強い痛みによる経口摂取困難と栄養状態不良を引き起こすため、抗がん剤使用の変更や中断を余儀なくされることがある。口腔粘膜炎は、口腔粘膜の基底細胞で産生される活性酸素種が原因とされており、抗がん剤投与にともなう酸化ストレスを減少させることは、口腔粘膜炎発症予防に有効だという。トレハロースには、抗酸化作用および炎症性サイトカインの過剰産生を抑制する作用が報告されていることから、トレハロースを口腔粘膜に塗布することで、口腔粘膜基底細胞で発生した酸化ストレスを抑制すると考えられる。しかし、今までその効果は不明であった。そこで、抗がん剤である5-フルオロウラシルを投与したラットの口腔粘膜にトレハロースを塗布したところ、酸化ストレスおよび炎症性サイトカインの産生抑制が認められた。このことから、トレハロースの口腔粘膜への塗布は、がん化学療法中の口腔粘膜炎を予防する可能性があることが示唆されたと、今回の研究成果を報告した。

 6題目の発表は、「トレハロースで赤い布を赤いままに -文化財保存の展開と可能性-」と題し、公益財団法人大阪市博物館協会大阪文化財研究所の伊藤幸司氏が講演を行った。発掘調査で見つかる有機遺物は、ダメージを受けて過剰な水分を含み強度が低下しており、不用意に乾燥すると収縮変形してしまう。伊藤氏は、これを防ぐため水分を糖の水溶液に置換、結晶化して保全する保存方法を研究する中で、トレハロースに着目。トレハロースは、結晶性が高く、通常環境下では安定した結晶を生成する。また、非結晶でも安定性があるため、ガラスに偏向するような加熱操作によって透明度高く固化させれば布などの色彩を損なうことなく保存処理できるとのこと。現在は、木材と鉄が一体となった遺物へのトレハロースの適応に期待されている。とくに、海底遺跡出土遺物、例えば沈没船は、他の方法では処理後に鉄部の腐食が進行して崩壊してしまうが、トレハロースを含浸処理したものは、後に劣化することなく安定した状態を保っているという。しかし、なぜこのような効果が得られるのかを解明するには至っていない。講演では、トレハロースを用いた具体的な文化財の保存処理方法とその効果について紹介していた。

 最後に、林原の森下治社長が挨拶した。「今回のシンポジウムを通じて、食・医療・工業・文化まで、非常に幅広い分野でトレハロースが展開されていることを実感した。それだけに、これからもしっかりした製品を供給し続けていく必要があると強く感じている」と、トレハロースの応用研究が広がる一方で、製品の供給責任はさらに重くなってきていると襟を正す。「2012年に新生・林原となって6年が経つが、その間に大型の設備増強を行い、現在では、十分に供給できる生産体制を整えている。また、トレハロース以外の素材についても設備増強を行い、特殊な構造を持った水溶性食物繊維のイソマルトデキストリンや、製パン用酵素の『デナベイクEXTRA』など、新たな素材の展開にも取り組み始めている」と、市場のニーズに応えられる供給体制を整えるとともに、次のステップに向けた準備も進めていると話していた。「シンポジウムで発表された研究成果を踏まえ、当社だけでなく、産業界、学校法人、研究所などとも協力しながら、人々の生活に貢献できるよう務めていきたい」と、今後もトレハロースの応用研究と実用化を支援していくことを誓った。

林原=http://www.hayashibara.co.jp/



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