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ヤンセンファーマ、「精神障害者就労における市民公開講座」を群馬県で開催、精神障害者の就労支援を取り巻く現状と課題について専門家が語る

2016.12.19 15:25 更新

 ヤンセンファーマは、群馬県医師会とともに精神疾患への理解、入退院と就労支援について群馬県内企業の雇用担当者などに向けて、「精神障害者就労における市民公開講座」を12月15日に開催した。公開講座では、群馬県と前橋商工会議所の後援のもと、上毛病院院長の服部徳昭先生、ひだクリニック院長の肥田裕久先生、NPO法人わかくさ福祉会 障害者就業・生活支援センターTALANTの野路和之センター長を招き、精神疾患と治療の説明から、精神障害者就労への医療現場の取り組み、および就労継続に向けた支援について講演が行われた。当日は、群馬県内の企業などから43名が参加し、精神障害者の就労を取り巻く現状と課題について理解を深めた。

 障害者雇用促進法の改正により、2018年から企業の障害者雇用の達成義務である法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられ、法定雇用率が引き上げられる。こうした状況を受け、全国的に精神障害者の雇用率が増加している一方で、群馬県は障害者の雇用を義務付けられている従業員50人以上の企業の実雇用率が都道府県別順位で34位タイ(厚生労働省群馬労働局「平成28年障害者雇用状況の集計結果」)にとどまっているという。今回の市民公開講座は、障害者雇用率の低い群馬県において、企業の雇用担当者などを対象に、精神疾患への理解と精神障害者の雇用促進を図ることを目的としたもの。開会にあたり、座長を務める群馬大学健康支援総合センター 副センター長・教授の竹内一夫先生が挨拶。「日本では高齢化が急速に進展しており、今後、さらに労働人口比率が低下していくことが予測されている。その中で、厚生労働省では、労働力不足対策として、民間企業における精神障害者の雇用を促進している。群馬県でも、精神障害者の雇用件数は伸びているが、まだ十分ではないのが実状だ。今回の市民公開講座を通じて、患者の入院から治療、退院後の就労支援に至るまで、県内の精神障害者就労に対する取り組みに理解を深めてほしい」と、市民公開講座を開催する趣旨を説明した。

 そして、上毛病院院長の服部徳昭先生が、「精神疾患と治療について」と題した講演を行った。「精神疾患の中でも、就労に大きな影響を及ぼしているのが統合失調症である。統合失調症は、人口の約1%が発症する内因性精神疾患で、原因はまだはっきりしていない。性差はなく、15歳から30歳で発症するケースが多く、20歳から25歳でピークを迎える」と、就労を妨げる重大な精神疾患である統合失調症について解説。「統合失調症の患者には、陽性と陰性の2つの症状が現れる。陽性の症状群は、妄想や幻聴・幻覚・幻視、混乱した思考、まとまりのない会話・行動・知覚、落ち着きのなさ、感情の不安定さなどがある。一方、陰性の症状群としては、感情鈍麻、思考内容の貧困化、意欲減退、閉じこもり、注意・集中力の障害などが挙げられる」と、統合失調症の主な症状について教えてくれた。

 「統合失調症の治療は、薬物療法が基本となり、これに加えて、病状の回復や程度に応じて精神療法やリハビリテーションが行われる。治療薬としては、抗精神病薬が使われ、病気によって起こっている感情不安定や妄想・幻覚、思考の障害といった症状を軽くすることができる。とくに、ここ数年は、1回の注射で2~4週間の効果が持続する持効性抗精神病薬が登場し、多くの患者に使われるようになっている」と、薬物療法が治療の中心になるとのこと。「ただし、抗精神病薬には、のどの渇き、体重増加、眠気、便秘、手の震えなどの副作用もあるため、症状に応じて使用量の調整や治療薬の変更など、適切な対処が必要となる」と、副作用についての知識や対処法を理解しておくことも重要であるという。「統合失調症の治療で課題となるのが、再発をいかに防ぐかという点。再発をくり返すほど症状が重篤化する傾向にあり、それだけ社会復帰も困難になってしまう。統合失調症の患者は、退院した後も薬物療法を続けながら、就労に向けて一歩一歩階段をのぼっていくことになるので、再発しないように、医療機関や支援センターなどがケアしていく必要がある」と、治療から就労へのステップでは再発防止が重点課題になると述べていた。

 続いて、ひだクリニック院長の肥田裕久先生が、「精神障害者就労における医療現場の取り組みについて」と題し、退院後から就労に向けた医療現場の取り組みを紹介した。「雇用における差別は歴史の中で大きく変わってきている。精神障害者についても、2006年に、『障害者の雇用の促進等に関する法律』の対象となり、2018年には精神障害者の雇用が事業主の義務となる。こうした背景から、ハローワークにおける精神障害者の新規求職申込件数と就職件数は右肩上がりで増加を続けている。一方で、精神障害者は離職率が高く、就職できても3年未満に仕事を辞めてしまう人が6割を超えている」と、精神障害者の雇用意欲が高まる中で、継続率の低さが問題になっていると指摘する。「精神障害者が働き続けるためには、就労準備性を適切に判断し、症状との付き合い方や障害受容の支援を行うことが重要になる。また、実社会に近い形で、負担のある労働を経験させることも大切であると考えている。そして、医療・福祉・行政の関連するサービスを包括して利用できる仕組みづくりも求められている」と、精神障害者の就労支援体制をさらに充実させる必要があるとの考えを示した。

 では、実際に医療現場では、どのような就労支援が行われているのだろうか。「精神障害者の多くは、思春期に精神疾患を発病しており、就職経験が全くなく、集団生活の経験も少ないため、就労継続へのハードルは高いのが実状だ。しかし、当院就職支援部の就職者を見ると、継続して勤務できている人は、病状の程度や入院回数には関係ないことがわかった。そこで、当院では、患者の働きたいという強い気持ちを重視し、社会経験が不足しているところを補い、患者の障害を踏まえた上で、健康な部分を生かして仕事ができるよう就労支援を行っている」と、それぞれの患者の病態に合わせた就労支援を行っているのだという。「具体的な取り組みとしては、昨年、ハローワークと連携した就労支援モデル事業を実施した。この事業では、精神障害者6名に対して、能力や適性、希望に応じたきめ細やかな就労および定着のための支援を行った。また、今年は、精神障害者ピアサポート専門員養成研修を実施している。精神障害者を、同じ精神障害を持つ患者のサポート専門員として認定するもので、精神障害者であることを生かした新たな働き方を提案している」と、具体的な事例を挙げながら、精神障害者の就労支援への取り組みを紹介してくれた。

 最後に、NPO法人わかくさ福祉会 障害者就業・生活支援センターTALANTの野路和之センター長が登壇し、「精神障害のある方が働き続けるための支援とは」と題した講演を行った。「精神障害者の雇用義務化が進められる中で、身体障害者や知的障害者に比べて、精神障害者の離職率は非常に高いものとなっている。その原因は、患者本人だけにあるのでなく、それを取り巻く医療機関や福祉、企業側にも精神障害者の就労について様々な問題を抱えている」と、精神障害者の就労支援は、制度だけが先行して、社会環境の整備が追いついていないのだと訴える。「こうした中で、障害者就業・生活支援センターでは、障害者の就職ではなく、安定した職業生活を送ることを目標に支援活動を行っている。とくに、患者それぞれの職業準備性や障害特性、職業適性などを評価するアセスメントを大切にしている。当センターは、現在311人の障害者が登録しているが、約8年間の平均定着率は81%、1年間の過去平均定着率は97%に達している」と、障害者就労において高い定着率を実現していると胸を張っていた。

 「精神障害者が働き続けるためには、就労支援機関が、企業の職場と精神障害者の間に立って、ジョブコーチを務めることが重要であると考えている。実際に当センターでは、精神障害者に対して、就労研修プログラムを実施し、雇用に関する正しい情報を提供している。とくに、このプログラムでは、就職面接の受け方を、実践を交えてレクチャーしており、自分の症状やその対処法をしっかり伝えられるように指導している」と、面接時に精神障害者が自ら症状や対処法を伝えることで、企業側に安心感を与え、就労時の信頼向上につなげることができると教えてくれた。「また、精神障害者が離職する原因の一つとして、認知機能の障害がある。この点についても、患者本人や支援者が理解し、一定レベルの訓練を行い、企業への配慮へとつなげていくことが必要になる」と、認知機能の障害が就労時のトラブルになる可能性もあると指摘していた。「就労後、治まっていた症状が再発・再燃するケースもあり、精神障害者が働き続けるための課題は多岐にわたる。そのためにも、周囲の力を活用しながら、あわてず、焦らず、あきらめず、ステップアップしていくことが大切である。医療機関には、『社会の中で働く』ことも治療であり、患者の成長のひとつのステップであると捉え、そのチャレンジを後押しするための体制を整えてほしい」と、精神障害者を取り巻く支援者が一丸となって、患者を受け入れ、働きやすい就労環境を作っていく必要があるのだとまとめていた。

ヤンセンファーマ=http://www.janssen.com/japan/


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