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矢野経済研究所、国内の嚥下食・咀嚼困難者食・介護予防食に関する市場調査、高齢者の低栄養対策で高カロリー・高タンパク・経口補食の介護予防食が伸長

2020.05.29 11:46 更新

 矢野経済研究所は、国内の嚥下食、咀嚼困難者食、介護予防食市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。その結果、入院・入所者数の増加や調理現場の人手不足で、嚥下食市場、咀嚼困難者食市場は成長の見込み。高齢者の低栄養対策で、高カロリー、高タンパク、経口補食の介護予防食が伸長すると予測する。

 食べる機能の障害、摂食・嚥下障害は誤嚥性肺炎や窒息の危険、脱水や低栄養の危険をもたらすばかりではなく、経口で食物を摂取するという人間の「食べる喜び」を奪うことにつながる。飲み込むことや噛むことが不自由な高齢者や患者を主な対象とした加工食品(嚥下食、咀嚼困難者食)、また、食べる量が少なくなり必要な栄養素が不足する高齢者向け加工食品(介護予防食)の市場規模は拡大しており、2018年度全体市場(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比108.4%の734.6億円と推計した。

 内訳をみると、2018年度の嚥下食市場は前年度比106.8%の284.5億円、咀嚼困難者食市場は前年度比111.6%の222.5億円(いずれも同ベース)であった。傾向的に、嚥下食は入院・入所高齢者数が増加することで、咀嚼困難者食は人手不足が深刻な施設の調理現場の省力化ニーズが高まっていることから、いずれも病院や高齢者施設向けに伸びている。また、2018年度の介護予防食市場は前年度比107.3%の227.6億円(同ベース)であった。介護予防食は高齢者の低栄養が問題視される中で、在宅高齢者(未病や健康な高齢者含む)向けを中心に伸長している。

 今後も高齢化の進展や嚥下困難症状自体の認知度が高まるにつれ、嚥下困難者として認知される人の数も急速に増えるとみられ、嚥下食は病院や高齢者施設での使用が中心とはいえ、市場規模は順調なペースで拡大する見込みである。

 また、要介護認定を受けた高齢者が640万人程度存在し、しかも年々増加傾向にあり、咀嚼困難者食の市場規模は約400億円まで成長していくことは十分に可能と考えられる。

 介護予防食は、病院や高齢者施設向けの業務用市場で、補食的に多く使われている。さらに在宅市場については、農林水産省が音頭を取って介護食品「スマイルケア食」の普及に努めており、原則、在宅の高齢者や障害者の方を対象として、低栄養の解消を目指している。

 嚥下食市場は今後も順調に拡大するとみられるが、市場規模の拡大につれて伸びは鈍化し、年率3~4%増の推移を予測する。これは嚥下困難者の数自体に限界があることと、価格競争が益々激化することが原因である。

 咀嚼困難者食市場は年率7~8%増の推移を予測する。やわらか食(きざみ食)の一般市販ルートは売場の拡大が見込まれ、徐々に伸びていく見込みである。これに対してブレンダー食(ミキサー食)は業務用市場向けに着実に伸び続ける見通しである。

 介護予防食市場は、低栄養を避ける手段として施設入居者の補食(おやつ・デザート)需要は安定的に伸び、同様に在宅高齢者の取り込みによって今後も年率3%前後の伸びを予測する。さらに「健康寿命の延伸」とどうリンクさせるかで、更なる拡大が見込まれる。

矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/


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