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矢野経済研究所、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場調査、2019年度は前年度比125%で890億円の見込

2020.03.12 16:35 更新

 矢野経済研究所は、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場を調査し、現況、領域別の動向、および将来展望を明らかにした。その結果、2019年度の国内InsurTech市場規模は前年度比125%、890億円の見込であることがわかった。健康増進から疾病管理プログラムまでトータルサポートの動きが登場し、サンドボックスを活用した保険にも注目が集まる。

 2019年度の国内InsurTech(インシュアテック)市場規模(参入事業者売上高ベース)は、890億円の見込みである。特にAI(人工知能)の活用領域が従来の不正検知を含めた支払査定などの保険金・給付金の支払領域や、アンダーライティング(引受査定)領域に加えて、保険商品の開発や募集人による保険営業領域などに拡大してきている。また、生命保険会社による健康増進型保険(健康増進型保険とは、従来の実年齢によって保険料が決定する手法とは異なり、健康診断結果やライフログデータを基に、保険加入者の健康状態や健康増進に向けた取組み度合いに応じて、保険料が変動する保険商品)や疾病管理プログラム(疾病管理プログラムとは、啓蒙活動から実際の行動変容、そして異常が見つかった際の最適な医療アクセスの提供、さらに給付金の支払いまで一貫してサポートしていく取組み)の開発に向けたデータ収集などが進んでいる。

 法整備について、まず保険業法は保険業高度化等会社への出資規制の緩和をはじめとした改正があった。また、「保険会社向けの総合的な監督指針(金融庁)」が一部改正され、InsurTech関連の保険商品における審査の透明性や効率的な審査を開始する方針が示されている。加えて、「規制のサンドボックス(サンドボックスとは、革新的な事業やサービスを育成する上で、現行法の規制を一時的に停止する仕組みで、所管官庁に届け出て、相談の上、試験的に事業を進める手法)」が動き出しており、新たな保険商品の創出に寄与している。

 支援環境については、2017年後半から生命保険会社やシステムベンダー主催のイベントに留まらず、複数の支援機関による関連イベントなどが登場しているものの、FinTechと比較するとまだ少ないのが実情である。引き続き、今後の積極的な支援環境の構築、拡大を期待する。

 技術的な環境整備においては、まず大手生命保険会社を中心にクラウドの活用に向けて積極的に取組む姿勢をみせている。この背景には特に大手のクラウドベンダー各社がFISC(金融情報システムセンター)の安全基準への準拠を進めていることから、クラウドサービスが導入しやすくなってきていることがある。

 従来、健康増進型保険商品は、国内の大手生命保険会社を中心にベンチャー企業などと協業し、保険商品の付帯サービスとして協業先のサービスを提供する取組みを進めてきた。また、疾病管理プログラムは、外資系の生命保険会社を中心に糖尿病などの重症化予防(重症化予防プログラムとは脳梗塞や心筋梗塞など再発率の高い疾患に罹患した際、手術等で一旦治癒、回復後の2回目以降の再発予防に向けたプログラムをさす)や心筋梗塞などの再発予防をはじめ、ベンチャー企業などと協業し取組んできた。

 こうしたなか、2019年以降、健康増進型保険商品の分野では、外資系の生命保険会社が徐々に健康増進型保険の投入を開始している。一方、疾病管理プログラムの分野でも、一部の国内の生命保険会社がベンチャー企業のスマートフォンアプリなどを活用した糖尿病の重症化予防に関する取組みをはじめており、健康増進から疾病管理プログラムまでトータルにサポートしていく動きが出始めている。将来的には、国内外の生命保険会社問わず、こうした保険商品を提供することが基本路線になるものとみる。

 国内InsurTech(インシュアテック)市場規模(参入事業者売上高ベース)は、2022年度には2450億円に達するものと予測する。

 AIやRPA(Robotic Process Automation)の活用領域が拡大し、従来から活用されてきた保険金・給付金の支払領域や、アンダーライティング(引受査定)領域に加えて、保険商品の開発や保険営業領域(営業の効率化)など活用領域が更に広がっていくとみる。

 また、クラウドの活用が徐々に広がりをみせていることから、今後、クラウド化の浸透に伴い、生命保険業界においてもAPIの公開に向けた議論が高まることが予想される。なお、大手生命保険会社ほどシステム構成も複雑化の一途を辿っており、APIの公開に向けてシステムの整理・改修などが必要となるため、2022年度から徐々に伸びていくとみる。

 保険商品については健康増進から疾病管理に至るまでをサポートする動きが増えていくと考える。こうしたことから、今後、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場全体は拡大していくものとみる。

矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/


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