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トレンド総研が小学校の現場で深刻化する「給食残し」問題を調査、子どもが残す給食のトップは「野菜メニュー」に

2018.05.23 20:40 更新

 近年、学校における給食の「残食率」の高さが問題になっている。こうした状況に対しては、提供する給食メニューの改善を求める声だけでなく、子どもたち自身の偏食が進んでいるという指摘も多くあがっているようだ。中でも、子どもたちの多くが苦手とする「野菜」については、残食が目立つ食材であり、学校のみならず、家庭においても適切な食育が求められている。

 こうした中で、現在注目を集めつつあるのが、子どもを野菜好きにするためのトレーニング=「ベジトレ」というキーワード。とくに、小学校入学前後の家庭における「ベジトレ」は、子どもの食事傾向、さらにはその後の人格形成にも大きな影響をおよぼすという見解もあるとのこと。そこで今回、トレンド総研では、この「ベジトレ」をテーマに、小学校教員および母親への調査を実施。また、子どもの食育事情に詳しい、栄養士・料理研究家・食コンサルタントの浜田陽子先生に、家庭における「ベジトレ」のポイントについてインタビューを行った。

 はじめに、給食のある学校において担任・副担任を務める小学校教員300名を対象に、「給食残し」に関する調査を実施した(調査対象:20~60代 小学校教員300名 ※現在、給食のある学校において担任・副担任を務めている人、調査期間:4月20日~4月23日、調査方法:インターネット調査)。

 まず、「自身の学校やクラスで、給食の残食率が気になることはあるか」と聞いたところ、86%と約9割もの教員が「ある」と回答。また、「現在クラスの中に偏食の児童はいるか」という質問には、31%が「多数いる」、66%が「いる」と答えている。さらに、教員歴が10年以上の教員からは、近年給食残しや偏食が加速しているという声も多くみられており、「10年前と比べて、給食の残食率は増えていると思う」と答えた人は66%と約7割、「10年前と比べて、偏食の児童は増えていると思う」と答えた人も79%と約8割にのぼっている。

 そこで、具体的に「学校給食において食べ残しが多い献立・食材」を質問したところ、「野菜のメニュー」が85%で最多に。続く「魚のメニュー」(46%)、「海藻のメニュー」(36%)、「牛乳」(19%)、「ごはん・パン・麺」(17%)などの回答を大きく上回った。また、教員たちに、「野菜が食べられない/苦手な児童の特性」を聞くと、「集中力が低い」(62%)、「忘れ物が多い」(52%)、「勉強が不得意である」(52%)などがあがり、偏食は生活態度や学習能力と関連している可能性も示唆された。なお、「野菜が食べられない/苦手な児童への対応」について質問すると、「給食に関する指導は現場に任されている」というケースが多く81%に達した。また、「頑張って残さず食べさせるように指導している」という教員も68%となった。

 その一方で、「近年は、家庭での食育が不足していると思う」(92%)、「小学校入学のタイミングで、野菜が嫌いな子どもは、その後の克服が難しいと思う」(74%)などの声も多くあがっており、学校だけではなく家庭でのトレーニングを望む教員の実態が浮き彫りとなった。

 それでは一方の母親たちは、家庭において子どもの野菜嫌いとどのように向き合っているのだろうか。小学校入学前(3~5歳)の子どもがいる母親300名に調査を行った(調査対象:20~40代女性300名 ※小学校入学前(3~5歳)の子どもがいる人、調査期間:4月20日~4月23日、調査方法:インターネット調査)。

 まず、「現在、子どもには嫌いな野菜があるか」と聞いたところ、全員が「ある」と回答。また、「小学校にあがる前までには、子どもに嫌いな野菜を克服してほしいと思うか」という質問では、92%の母親が「そう思う」と答えている。そこで、家庭でどのようにして野菜嫌いの克服に取り組んでいるかを聞くと、「細かく刻んだり、ミキサーにかけたりする」(30歳)、「可愛い型でくり抜いて楽しく食べられるようにする」(29歳)、「苦手なものを食べたらご褒美のおやつをあげる」(41歳)などの回答があがった。調理によって野菜への抵抗感をなくしたり、子どもが野菜を食べるモチベーションをアップさせたりと、さまざまな工夫がなされているようだ。

 その一方で、「小学校にあがる前に、子どもが嫌いな野菜を克服できそうだと思う」と答えた母親は半数未満(48%)にとどまり、「思わない」(52%)という回答が多数派だった。また、「子どもの野菜嫌い克服のために、何をすれば良いかわからない」母親も83%となった。野菜嫌い克服に向けて、家庭での食育が重要であることは理解しつつも、具体的にどうすればよいか悩んでいる人が多いといえそうだ。

 こうした背景をふまえて、今回は子どもの食育事情に詳しい、栄養士・料理研究家・食コンサルタントの浜田陽子先生に、家庭における「ベジトレ」のポイントについて話を聞いた。

 「先生も親も、子どもの好き嫌いには悩まされるもの。とくに家庭においては、子どもの好き嫌いに大人のほうがひるんでしまい、偏食を許容しすぎているように思う。とはいえ、私自身も2人の子どもをシングルマザーとして育ててきた経験があるので、子どもがいうことを聞かないときには、“注意するのが面倒”“平和に過ごしたい”という気持ちが先行して、好き嫌いや偏食をつい許容してしまいそうになる気持ちもわかる」と説明する。

 「とくに、現代のパパ・ママ世代は、共働き率も高く、時間的にも精神的にも余裕がないことが多い。加えて、この世代は“食育崩壊世代”ともいえる。これには、日本の“食”に関する歴史が深く関わっている。高度成長期からバブル期にかけて、日本では食の欧米化が進んだ。“食べれば食べるほどよい”という風潮で、最もエネルギーを摂取した時期でもある。この時代に育った子どもが大人になって、生活習慣病という社会問題も顕著になった。その世代を親に持つ、あるいは自身が親になったのが、今のパパママ世代。こうした背景から、大人たち自身も“食育”について十分に考えられていないことが少なくない」と指摘する。

 「そもそも“食事”とは子どもの心身を育てるためのものであり、その根底にあるのは、子どもたちを豊かに育てたいというシンプルな願い。目の前の好き嫌いに振り回されることなく、“子どもたちが健康で幸せになるために、我々大人はどういう食事を、どういうスタンスで提供すべきか”という視点に立ち戻って考えることが重要だ」と語る。

 「今回の調査では、給食の残食率、中でも野菜メニューの食べ残しが多いという点がわかった。実際に、学校現場で話を聞いていても、生徒たちが野菜メニュー、とくに生野菜を残すことが多く、大量に残食で戻ってくるという話をよく耳にする。残されている野菜は、ピーマンやニンジンなど昔から大きく変わってはいないが、現代ならではの特徴といえるのが、“食べてもいないものを嫌がる”子どもが多い点。見た目が気持ち悪いから、色が気に入らないからといった理由で、チャレンジすらしないというケースが目立つ。ひどい場合は、前にピーマンがダメだったから他の緑の野菜も全部ダメ、という子どももいる」とのこと。

 「こうした状況になると、親自身もあきらめてしまいがちだが、実はちょっとした声掛けがきっかけで食べられるようになることは多いもの。また、“昨日は食べられなかったけれど、今日は大丈夫だった”、“給食では食べられなかったけれど、家では食べられた”ということも珍しくない。野菜を好きになるトレーニング=『ベジトレ』を通じて、まずはチャレンジのきっかけをつくることが重要だ」と説明する。

 「そして、この“チャレンジ”というステップを踏むことが非常に重要。こうしたスタンスは、食だけにとどまらず、その後の子どもの人格や考え方にも影響をおよぼし得ると思う。子どもは大きくなるにつれ、ひらがなが書けるようになったり、跳び箱が飛べるようになったりなど、チャレンジと成功体験を積みながらさまざまなことができるようになる。そして、1日に3回も機会がある食事は、他のことに比べて成功体験を積むチャンスがたくさんあるのだ。野菜嫌いの克服という目先のことだけではなく、それを通じて、子どもが豊かで健やかで幸せな生涯をおくれるようにするのが、本当の食育だと思う」と訴える。

 「また、野菜嫌いの克服については、子どもが“美味しくない”と感じた要素がどこにあるのかを探すことも重要だ。例えば、トマトが嫌いな子どもは、味そのものが嫌いというよりは、生トマトの食感が嫌いというケースが多い。どこに苦手意識を持っているのかを見極めて、その要因となっているところをフォローしてあげることが大切だと思う。生の野菜でうまくいかない場合は、野菜ジュースを使うのもおすすめ。野菜ジュースを飲ませたからおかずを一品減らそうという考え方はNGだが、『補助』としてはいろいろな使い方が可能だ。うちで作れば甘さが調整できるし、最近は市販の野菜ジュースも格段に飲みやすくなっている。もちろん生の野菜を食べられるようになるのが本当の克服ではあるが、“口に入れた”という実感を持たせるためのファーストステップとしては有効といえるだろう」とアドバイスする。

 「もし、野菜ジュースをそのまま飲むのも難しいようであれば、料理に使ってみるという手段もある。煮詰めてソース風にする、トマト煮やラタトゥイユに使う、カレーやシチューの水分のかわりに使う、他のゆで野菜と一緒にミキシングしてポタージュにするなど、使い方もさまざま。このときのポイントは、“この料理に野菜ジュースが入っていたんだよ”ときちんと子どもに教えること。子ども自身に“この料理には野菜ジュースが入っていて、自分の口に入った”ということを理解させることが、成功体験へとつながり、野菜嫌い克服への第一歩になる」とコメントしている。

トレンド総研=http://www.trendsoken.com


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